21Oct
私たちが運動をするとき、よく「コア」とか「インナーマッスル」といういい方をしますが、これは赤ちゃんのときに、まず鍛えておかなくてはいけないものです。赤ちゃんが体をつくっていくプロセスというのは、実は、運動の基礎を作るプロセスでもあるんです。
生まれたての赤ちゃんは、もにょもにょ動いているだけですが、そこから最初に何をするかというと、しがみつく。腕と足はまだ使えませんから、体全体で親にしがみついてきます。しがみつくことで、自分の体の中心、コアが安定する感覚を学んでいくのです。
ですから、この時期はいっぱい、抱っこしてあげてください。たくさん抱っこしてスキンシップすることで、赤ちゃんは体の中心が定まっていき、心も安定するのです。
しがみつく感覚を養うことは、ゆくゆく体全体を使ったなめらかな動きにつながります。体操や踊りなどで、表現力があるとか、ないとかいいますが、まさにこの表現力に必要な感覚でもあります。
赤ちゃんは、次に肩の関節が発達して、自分の手で体を支え起こすという動きができるようになります。そして股関節が発達してくると、体の方向を転換する、「転がる」という動作が出てきます。寝返りですね。
赤ちゃんは、ごろんと転がりながら、自分の体がいったいどっちを向いているのか、を学んでいます。初めて寝返りをした赤ちゃんが、目を丸くしてキョトンとしたり、寝返りをしてはいかにも楽しそうに笑ったり……。
転がる前の景色と、転がりながら見ている景色と、転がり終わったときに見える景色、みんな違います。転がることで、自分と空間との位置関係がわかるようになる。それによって脳とつながる神経回路も、次々とできあがり、数を増やしていくのです。
この位置関係が体でわかっていないと、スポーツはできません。
たとえば野球の場合、飛んでいくボールをいちいち見て走ってはいられません。ボールを瞬時に見て、落下地点を予測して走り、キャッチする。投げるときも、味方が走りこんでくるだろうという場所を予測して投げます。こうした動きは、今、自分の体がどこを向いているか、空間のどの位置にあるのか、を感覚として身につけていないとできないのです。